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受験用の英語学習 その3

ずばり、英語力を向上させるには、英語に関与する時間を増やし、継続的に学ぶことができる「材料」をできる限り増やしてください。そしてそれらを楽しんでください。

材料とは、テレビのニュース、インタビュー番組でも、VOA Learning EnglishでもCNN10でも、English Journalなどの雑誌でも、好きな歌、テレビ番組、映画でも、英会話スクールでも、ボランティアでもなんでも構いません。経済的に許すなら留学も良い手段です。できれば、毎日1~2時間英語を使用して、楽しんでください。それを5年から10年続けてください。そうすれば、CEFRのいうところのB2レベル(*2)にたどり着くことができます。

 

そのプロセスを進める上でいくつかのアドバイスもあります。

 

1つは、良いコーチ、先生にアドバイスを求めてください。ほとんど全てのスポーツ選手がそうするように、コーチ、先生と話をしてください。「どうすれば、モティベーションを維持できるか」「具体的な材料はどこにあるのか」「コーチはどうやって英語能力を向上させたのか」など自分がすべきことのヒントをもらってください。

 

一方、コーチ、先生は常に正しい、と思い込まないでください。「TOEIC何点とれば目標達成」「中学英語だけで英語は十分」「日本人の英語能力は実は高い」「英語や幼少期からやる必要はない」「通じればOK」「国内では英語必要な場面は回避可能」「これからはスマホのアプリが翻訳してくれるので英語は必要ない」など耳に入るかもしれません。外国語習得はそんな簡単なことではありません。自身の判断で良いアドバイスのみを選択してください。

 

2つ目は、言語の習得には莫大な量のリスニングが必要となります。自身のレベルに合った材料をできれば毎日1時間聞くようにしてください。ラジオ、テレビ、Webサイトのストリーミング、楽しめるものならなんでも結構です。分からない場合も多々あると思いますが、聞き流す場合があっても構いません。毎日、聞いてください。

 

3つ目は、自身のレベルより2段階ほど低いレベルで書かれた読み物を貪欲に読んでください。Graded Readersといった学習者用に語彙を絞った本を利用してください。エッセイや報道物も英語学習者用に編纂されたものもインターネット上には多くあります。楽しみながら、どんどん読んでください。

 

4つ目は、外国人との交流を増やしてください。外国人の友達やTA(Teaching Assistant)と交流してください。市やボランティア団体が提供する国際交流の場を利用してください。英会話スクールや留学も可能なら検討してください。

夏休みなど長期休暇には、サマースクールなど様々な交流イベントがあります。検討の価値があるかもしれません。

 

5つ目は、受験が英語勉強のゴールだとは思わないでください。日本の社会も増々英語を必然的に受け入れることになります。これまでの受験英語が「成功してこなかった」事実を認め、受験勉強としての英語から、日常生活で使えるツールとしての英語、会社でミーティングを理解し、発言するための英語、海外の人たちと自らのアイデンティティを語る際に必要な英語を勉強するようにしてください。

 

◆受験英語をどう考えるか

受験英語を学習の最終目標に設定するのはやめましょう。

塾や学校での「学習」が本当に最善の策なのか、検定試験合格を目標にすることが自分の将来の英語力向上のためにベストな方法なのかを意識してください。

 

これからは、皆様の英語力を正当に評価する企業、団体、個人が増えてきます。それらの評価はペーパー試験といった形ではなく、あなたがいかに論理的で、説得力があり、ウィットに富んだ話ができるか、を問うものです。敵対するのではなく、建設的な議論ができる能力、相手への思いやりを表現する能力が求められます。

受験の英語はそのための基礎力を鍛えるものとしてとらえ、その先の英語力向上のため日々時間を費やしましょう。

 

*2 B2レベル

英語のB2レベルは、英語の職場で機能します。事実、国際的な職場における英語の非ネイティブスピーカーの多くは、このレベルの英語力です。しかし、英語を使って働くB2レベルの人は、特に自己の分野以外ではニュアンスの理解に欠けます。また、会話での微妙な表現や言葉の裏にある意味を逃します。

CEFR ガイドラインによると、英語のB2レベルの人は:

  1. 自分の専門分野での技術的な議論を含め、その話題が具体的でも抽象的でも、複雑な文章の主旨を理解できる。
  2. ある程度流暢に、自然に相手とやりとりができ、無理なくネイティブスピーカーと通常の対話ができる。
  3. 幅広い話題に対して明確で詳細な文章が作れ、複数の選択肢の長所や短所を挙げながら時事問題に対する自分の意見を述べられる。